レンアルの居る部屋

  1. 準備運動部に入部したジャージ姿の千明と、部長の新藤が向かい合って立つ。
                【新藤】。さて!己を知るには基礎が肝要だ!新入生の君にはまず一通りの準備運動を会得してもらおう!
                【千明】。あー…会得ってか、大体わかると思いますけど…。
                【新藤】。え?
                【千明】。あれですよね、屈伸・しんきゃく・アキレス腱のばし、あと、ぜんこうくつに回旋…。
                【新藤】。うぉ、何きみ経験者!?
                【千明】。体育の授業でやるやろ…毎回。
                【新藤】。僕から君へ教えることはもう何もない…。よくぞここまで…。
                【千明】。いいんですかそれで…。
  2. 千明、腕回し、上腕ストレッチ(まえ)、首倒しなど、様々な準備運動を行う。
                【千明】。うーん…一通りやってみましたけど、ここから一つに絞るとなると…難しいですねぇ。
                牛尾、準備運動を終えた千明に「ほいポカリ」と飲み物を差し出す。
                【牛尾】。必ずしも一つに絞る必要はないんだけどね。
                【千明】。えっ。
                【牛尾】。去年引退した先輩で二刀流でやってた人がいてね…アキレス腱伸ばしと手首伸ばしを同時に行う猛者だった…私らにはできない芸当だったな。
                そう言いながらグイ、と上腕を伸ばす牛尾。
                【千明】。へぇ…。
                そう言いながらも、「しばしばセットでやるやつやん…。」と思う。
  3. 【磯貝】。オレ?オレは単にボンボンが好きだから、一番ボンボン映えする運動を選んだだけだよ。そんな感じで好きに決めたらいいと思うよー。
                そう言ってファサーとボンボンを振りながら体側をする磯貝。
                【牛尾】。そういえば千明ちゃんもチア志望だったよね。
                千明は「『も』…?」と思う。
                【牛尾】。やっぱそういう激しく動く系が好きでウチに来てくれた感じ?
                【千明】。あー…そうですねえ、まあチアのそういうアクロバティックな動きとかに憧れてたのはあるんですけど、何より私、人を応援するのが好きなんですよ。
                千明は少し照れながら話す。
                【千明】。準備運動も言うてみたら自分自身の体に対する「応援」やないですか…。それってもう実質チアやん…て気付いたんですよね。それで入部しようって決めましたね。
                部員一同、各々の運動を行いながら、千明の発言を聞いて困惑した表情になり、「何を言ってるんだ?」「準備運動は準備運動だが?」「ツッコミ気質かと思ったら案外変な子か?」などと思う。
  4. 「準備運動これ即ち…己の肉体を鼓舞するものなり。」という声が突然部室に響く。
                部員たちがはっとすると、ジャージ姿の50代女性教師が、両腕を頭上に伸ばすと同時に息を吸い、腕を下ろすと同時に息をはく運動をしながら入ってくる。
                【教師】。準備運動の大家、雲堂 純吾郎のスゥゥ…ハァー言葉よ!
                【新藤】。顧問の神幸先生!
                千明は「深呼吸の人や…」と思う。
                【神幸】。フフ…新入生の…千明さんと言ったかしら。あなたは準備運動の真髄をよく理解している。…有望な人材だわ。ひとまずあなたの運動は決めないでおきましょう。応援が好きというならまずは…先輩の運動に『応援入ります!』て感じで加わることから始めてみなさい。
                【千明】。そういう応援…?
                神幸は真剣な表情になって言う。
                【神幸】。ゆくゆくは…ひょっとすると、準備運動覇者(ウォームアップ・マスター)になれる器かもしれない…!
                部員一同、その言葉におののく。
                【部員一同】。す…すべての準備運動を日常的にこなす、ウォームアップ・マスターに…!?
                【千明】。普通やないんですかそれは!

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