レンアルの居る部屋

  1. リビングのテーブルに腰掛け、談笑する男女。
                女は楽しそうに何かを話している。男は手を顎の下に組み、それを聞いている。
                女、声を上げて笑いながら話す。
                男はそれを聞きながら、切なそうな表情をする。
                【女】。…春夫どうしたの?悲しげな顔して…。
                春夫、自分の表情に気づき慌てる。
                【春夫】。ゴ、ゴメン…何でもないよ…。
                【女】。…なにか気にさわる事言った…?
                春夫、しばらくの沈黙ののち、語り始める。
                【春夫】。――秋子。君を傷つけまいと今まで黙ってたんだけどさ…。
  2. 【春夫】。秋子の笑い声聴くと、思い出しちまうんだ…いやでも。
                秋子、春夫の台詞に動揺する。
                【秋子】。…何を?
                シン…とまたしばらく沈黙が流れる。
                春夫、顎の下に手を組んだまま、口を開く。
                【春夫】。――君の笑い方…そっくりなんだよ、ヒグラシの鳴き方に!
                春夫、はぁ…とため息をつく。
                【春夫】。聴くたびに…切なくなる…!
                【秋子】。な…なぁにを深刻そうに言い出したかと思えばそんなコト…!春夫ってばもぉー!カナカナカナカナ…!
                【春夫】。それね。
  3. 【秋子】。ほんっとにもー、カナカナカナカナ…カナ…カナ…。ふぅ…。
                【春夫】。そこ!!
                春夫、がたっと席を立ち、テンションの下がった秋子を指差しながら叫ぶ。
                【春夫】。その徐々にトーンダウンしてくとこが切なすぎるんだよォオーっ!寂寥感MAX!あぁあぁ…!
                【秋子】。急にうるさくなったね春夫…。
                【春夫】。ハッゴメン…つい熱くなってしまった…。ツッコミに熱が。
                【秋子】。…私こそごめんね。自覚はあったんだけど…春夫にそんな思いさせてたなんて気づかなくて…。不快に思うなら直すようにするね…。
                【春夫】。いやっ別にそんな…不快に思うとかじゃ…ほっ!
                春夫、急に鼻がムズムズし出した様子。
                【春夫】。ほっ…ホォッ…ホケキョ!
                春夫のくしゃみに驚いたのち、机に頬杖をついてニヤニヤし出す秋子。
                【秋子】。…ちなみに私は春夫のくしゃみを聞くとのどかな気分になるよ。
                【春夫】。なんで?

使用画材:ミリペン

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