レンアルの居る部屋

  1. 「Aの駄目な夢」。
                20代女性Aが目の前の光景を不思議そうに見つめている。
                【A】。ここの改札、いつから真実の口になった?
                Aは友人Bと一緒に駅の改札前に立っている。
                改札機はひとつだけあり、その上には真実の口が乗っている。
                【B】。えー、けっこう前からだよ?
                【A】。そうかあ…。しばらく来ないうちに変わるなァー。
                そう言いながらAはICカードケースを取り出す。
                【B】。あ、それ要らないよ?
                【A】。え。
                【B】。真実の口タイプの改札は手ぇー入れるだけで通れるんだよ。
                【A】。そ、そうなんだ…。え、でもそれ…指紋の登録とかしてなきゃとか…?
                【B】。いや。
  2. 【B】。そーいう機械的なやつじゃなくて、その人の中に積まれた徳が反映されて通れるようになってるんだよ。
                【A】。と…徳…!?
                【B】。お金と違ってどれだけあるか目に見えないのが不便だけど、まあ日頃から徳をチャージしてればまず通れるよ。
                【A】。徳をチャージ…。
                【B】。たまーに引っかかってる人見るけど…まあ90パーの人は通れるらしいしね!
                【A】。へえ…。(10パーの人が引っかかるってまあまあ多いんでは…。)
                【B】。じゃ、あたし先に行くね?
                B、改札機の前に立ち、真実の口に手を入れる。
                【B】。こう手を入れて…。
                改札がギィコと開く。軽い足取りで通り抜けるB。
                【B】。ホラッ通れた!こんな感じ!Aもやってみ?
  3. 【A】。え…。
                困惑するA。
                【A】。あー…私…徳、足りてるかな…?
                【B】。Aは大丈夫だよ。
                改札の向こう側からAを諭すB。
                【B】。だってさっきとか…向こうから来る人とすれ違うのに備えて、さりげなーく不自然にならない速度で横にずれてあげてたじゃん。
                【A】。それが徳…?ささやかすぎない?
                【B】。ダイジョブダイジョブAなら絶対通れるって!怖がらずにやってみ!
                A、しばらく不安そうにするが、やがて意を決して改札と向き合う。
                【A】。…わかった、やってみる。
                A、きっ、と真剣な表情になり、す…と手を差し入れる。
  4. あぐっ、と真実の口はAの手を噛む。
                【A】。だめじゃん!
                Bはそれを見てやや沈黙した後、気まずそうに声を漏らす。
                【B】。…あー…。
                A、トホホ…となりながら言う。
                【A】。あっ、「あー…」じゃあないですよBさん…もっ…もぉおっ…!だめじゃん!
                完

使用ツール:FireAlpaca、MediBang Paint

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